疥癬
疥癬とは
疥癬は、ヒトの皮膚の角層に寄生するヒゼンダニ(疥癬虫)による感染症です。ときに自然治癒することもありますが、湿疹化したり周りの人に感染させてしまったりすることが多いため、疑われる場合には早めに診断と治療を受けていただくことが大切です。
症状
感染すると1~2か月ほど症状がない期間があり、その後かゆみや発疹が出現します。症状は大きく2つに分けられます。
- 通常疥癬
- 疥癬トンネル
手のひらや指の間に見られる幅0.4mm、長さ5mmほどの白っぽい線状の発疹です。かゆみは比較的軽いものの、検査をするとヒゼンダニが見つかりやすいという特徴があります。 - 紅斑性小丘疹
お腹、胸、わきの下、ふとももの内側などにできる赤いプツプツとした小さな発疹です。かゆみが非常に強いですが、検査をしてもヒゼンダニが見つかることはまれです。 - 結節
主に陰部に見られる赤茶色のしこりです。かゆみが非常に強く、治療してヒゼンダニがいなくなった後も、しこりとかゆみが数か月以上残ることがあります。
- 疥癬トンネル
- 角化型疥癬(ノルウェー疥癬)
重い病気をお持ちの方や、ステロイド剤や免疫抑制薬により免疫力が低下している方に見られる重症なタイプです。手足やおしりの皮膚がざらざらと厚くなり、頭・首・耳にまで発疹が見られるようになります。爪が厚くなる爪疥癬を合併することもあります。
原因
ヒゼンダニが皮膚に感染することが原因です。肌と肌の直接接触で感染することが多いとされていますが、布団などを介して感染することもあります。
角化型疥癬では多量のヒゼンダニが患者さまの皮膚角層に存在するため、剥がれた角層が散らばることにより、直接接触しなくても感染する可能性が高くなります。
検査
顕微鏡や拡大鏡(ダーモスコピー)を用いて、ヒゼンダニを発見することができれば診断がつきます。なお治療後に再検査を行う場合、ヒゼンダニの死骸が角層とともに剥がれ落ちる4週間後以降が目安となります(1)。
治療
- ストロメクトール
ヒゼンダニそのものに有効な内服薬です。空腹時に1回3~5錠を内服し、1週間後にもう1回内服することで治療効果を発揮します。この薬はダニの卵には効果がなく、1回だけの内服では卵が生き残ってしまうので注意が必要です。 - スミスリンローション
お子様や妊娠されている方の場合、ストロメクトールは安全性が確認されていないため外用薬での治療がおすすめです。また、爪疥癬の方にはストロメクトールがほとんど効かないため外用薬が必要になります。
スミスリンローションはしっかりと外用することで、ストロメクトールと同等の効果を発揮します。首から下の全身にボトル1本分を外用し、12時間以上あけてシャワーや入浴で洗い流します。ストロメクトールと同じように、5~10日後にもう1回外用することが重要です(1)。 - オイラックスクリーム
かゆみをおさえる効果がある外用薬です。副作用はほとんどありませんが、ヒゼンダニに対する効果も弱いため、ストロメクトールと併用するのが一般的です。 - そのほかの薬
かゆみがつらい方には、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を併用することがあります。ステロイド外用薬は免疫力を低下させるため、ヒゼンダニが残っている状態では使用してはいけませんが、ヒゼンダニがいなくなった後に残った発疹には有効です。
日常生活での注意点
通常疥癬ではヒゼンダニの数が少ないため、患者さまを隔離する必要はなく、室内に殺虫剤を散布する必要もありません。しかし、角化型疥癬では、患者さまを隔離し、ピレスロイド系殺虫剤を散布する必要があります。また、衣服も通常疥癬では普通の洗濯で構いませんが、角化型疥癬では洗濯後に乾燥機を使用するか、50℃10分間の熱処理後に洗濯する必要があります。布団は角化型疥癬の場合、治療終了時に1回だけ熱乾燥、もしくはピレスロイド系殺虫剤を散布後に掃除機をかけてください。
患者さまと同居されている方は、たとえ症状が出ていなくても予防的治療(保険適応外)の対象となります。治療後の再感染を防ぐためにも、できるだけ早めに皮膚科を受診する方が安心です。
<文献>
(1) 疥癬診療ガイドライン(第3版追補). 日皮会誌. 2018;128:2791-801.