水虫
水虫とは
水虫は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が皮膚の表面の角層に感染して起こる病気です。医学用語では、足に感染した場合は「足白癬」、爪に感染した場合は「爪白癬」と呼びます。
日本人の5人に1人が水虫、10人に1人が爪水虫という統計もあり(1)、皮膚科では非常にありふれた病気です。ただその一方で、水虫は細菌感染の原因となることが古くから知られており、近年は足底のメラノーマ発症に関連することも報告されています(2)。市販薬にも一定の効果がありますが、ぶり返す方が非常に多く、完治を希望される方には皮膚科への受診をおすすめしています。
症状
水虫は、症状によって「趾間型」「小水疱型」「角質増殖型」の3つのタイプに分けられます。もっとも多いのは「趾間型」で、2番目は「小水疱型」です。「角質増殖型」や爪水虫は、かゆみがほとんどないため、気がつかずに放っておきがちです。下のような特徴が見られたら、水虫を疑いましょう。
- 趾間型(しかんがた)
指の間の皮がむけるタイプです。ジクジクと湿って皮膚がふやけることも多いです。かゆみの程度はさまざまです。 - 小水疱型(しょうすいほうがた)
足のうらに小さな水ぶくれができます。かゆみは強いことが多いですが、ほとんどかゆくない場合もあります。 - 角化型(かくかがた)
足のうらの角質が厚くなり、表面がざらざらします。冬にひび割れができることもあります。かゆみはほとんどありません。 - 爪水虫
親指の爪にできることが多いです。爪が白く濁り、厚く、もろくなります。
原因
原因である白癬菌はバスマットやスリッパなど、いたるところにいます。水虫の人の皮膚から落ちた角質では、白癬菌が数週間も生きたまま残ることもあります。白癬菌は高温多湿の環境(温度15℃以上、湿度70%以上)になると活発に増殖します。
白癬菌自体の感染力はそれほど強くないため、1日1回皮膚を洗えば菌が付着しても感染しないとの報告もあります。ただし白癬菌が住みやすい環境の方(汗をかきやすい方、蒸れやすい革靴やブーツを履いている方、糖尿病の方など)は、気をつける必要があります。
検査
水虫とまぎらわしい病気は多く、ベテランの皮膚科医でも見た目だけで診断すると2割ほど誤診する、と言われています。そのため、水虫の診断には検査が必要不可欠です。
検査を行う時は、まず患部の皮を少し剥いて取ります。取った皮を水酸化カリウム溶液につけて溶かし、顕微鏡で観察します。白癬菌が見つかれば、水虫と確定診断できます。
治療
- 外用薬
外用薬にはいくつか種類があり、水虫のタイプや皮膚の状態によって薬を使い分ける必要があります。白癬菌そのものに効く抗真菌薬だけではなく、亜鉛華軟膏、サリチル酸ワセリンなどが効果的な場合もあります。また爪水虫に対しては専用の外用薬「クレナフィン」が2014年9月に、「ルコナック」が2016年4月に発売されています。
外用薬は足を綺麗に洗ってから塗るようにしましょう。お風呂上りに水分をていねいにふき取ってから薬を塗ることがポイントです。塗り残しがあると、ぶり返す原因になるため、両足の全部の指の間と、足のうら全体に塗ることが大切です。
外用薬は効果が見られても、すぐに塗るのをやめてしまうと白癬菌が残っていて、ぶり返してしまいます。塗る期間は趾間型で2か月以上、小水疱型で3か月以上、角化型で6か月以上が目安とされており(3)、皮膚が綺麗になってから1か月は塗るのがポイントです。 - 内服薬
爪水虫は外用薬が効きにくく、内服薬がもっとも効果的です。また、水虫でも状態によっては短期間、内服薬を用いる場合があります。内服薬には3種類あり、それぞれに長所と短所があります。- ラミシール
毎日1日1錠内服する薬で、皮膚の水虫では1~2か月、爪水虫では6か月間継続します。重い肝障害がある方や、白血球や血小板が少ない方は内服できません。健康な方でも、まれに肝障害や白血球減少などを起こすことがあるため、内服中は月1回ほど血液検査をする必要があります。併用禁止薬はありません。ほかの薬剤に比べ、内服期間が長いものの最も安価なのがメリットです。 - イトリゾール
皮膚の水虫では毎日1~2錠内服する薬ですが、爪水虫ではパルス療法という特殊な飲み方をします。パルス療法では、「1日8錠内服を1週間継続し、3週間休薬」を3回繰り返します。重い肝障害がある方や、妊娠している方は内服できません。ラミシールと同様に、内服中は月1回ほど血液検査をすることが望ましいとされています。併用禁止薬が多いため、ほかに内服している薬がある方は注意が必要です。また、この薬剤は後発品では効果が低くなるという報告(4)があるため先発品を選んでいただくのがお勧めです。 - ネイリン
2018年7月に発売された薬です。1日1錠で3か月間内服することで爪水虫に効果を発揮します。まれに肝障害を起こすことがあるため、内服中は月1回ほど血液検査をすることが望ましいとされています。妊娠している方は内服できませんが、併用禁止薬はありません。皮膚への有効性が証明されていないため、皮膚の水虫も同時に治療する場合には外用薬を併用しなければならないのが欠点です。
- ラミシール
日常生活での注意点
いくら外用していても、蒸れた状態が続くと治りが悪くなるため、入浴後はタオルでしっかり水分をふき取りましょう。5本指の靴下をはいたり、指の間にガーゼを挟んだりするもの効果的です。
ご家族に水虫の方がいらっしゃる場合は、ご家族も一緒に治療することが大切です。バスマットやスリッパを共有しないように気をつければ再感染の危険性は減らせますが、一緒に治療していただくのが一番確実です。
<文献>
(1) 仲 弥ほか: 足白癬・爪白癬の実態と潜在罹患率の大規模疫学調査. 日臨皮誌. 2009;27:27-6.
(2) Yuma W et al: High prevalence of dermatophytosis of the feet in acral melanoma of the foot. J Dermatol. 2024; doi: 10.1111/1346-8138.17256.
(3) 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019. 日皮会誌. 2019;129:2639-73.
(4) 仲 弥: ジェネリックの問題点 内服抗真菌薬. 皮膚臨床. 2007;47:1299-305.