じんましん

蕁麻疹(じんましん)とは

蕁麻疹は、かゆみを伴った赤い発疹が全身にできる病気です。皮膚に散らばっている肥満細胞が刺激を受け、さまざまな化学伝達物質(ヒスタミンなど)を分泌することにより、このような発疹ができると言われています。

肥満細胞への刺激には、アレルギー反応が関与するものと関与しないものがあります。蕁麻疹は食物アレルギーや薬剤アレルギーによるものがよく知られていますが、それらはむしろ少数で、さまざまな原因により症状が出現します。

症状

皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり、しばらくすると跡かたなく消えてしまいます。多くの場合はかゆみを伴いますが、自覚症状のない方もいらっしゃいます。一つ一つの発疹は24時間以内に消えますが、ほかの部位に新たに発疹が生じることが多いです。患者さま自身にデジタルカメラなどで適宜写真を撮っていただくと時間に伴う変化をチェックできるため、診断の手助けになります。

蕁麻疹そのもので発熱することはありませんが、感染症に伴う蕁麻疹の場合には37℃以上の発熱が見られることが一般的です。

重症例では呼吸困難・血圧低下などのアナフィラキシー症状が見られることもあるため注意が必要です。数日~2週間程度で治癒する急性蕁麻疹、6週間以上出没を繰り返す慢性蕁麻疹に分かれます。

原因

蕁麻疹はさまざまな原因により発症します。日本皮膚科学会の蕁麻疹診療ガイドライン(1)では以下のように「直接的な要因」と「背景として関与する要因」が挙げられています(一部改編)。

  • 直接的な要因
    • 外来抗原
    • 物理的刺激
    • 発汗刺激
    • 食物
      抗原、食品中のヒスタミン、仮性アレルゲン(タケノコ、もち、香辛料など)、食品添加物(防腐剤、人工色素)、サリチル酸など
    • 薬剤
      抗原、造影剤、解熱鎮痛剤、防腐剤、コハク酸エステル、バンコマイシンなど
    • 運動
  • 背景として関与する要因
    • 特異的IgE
    • 感染
    • 疲労・ストレス
    • 食物
      食品中のヒスタミン、仮性アレルゲン(タケノコ、もち、香辛料など)、食品添加物(防腐剤、人工色素)、サリチル酸など
    • 薬剤
      解熱鎮痛剤(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬(血管性浮腫)など
    • IgE または高親和性IgE 受容体に対する自己抗体
    • 基礎疾患
      膠原病、造血系疾患、遺伝的欠損(血清C1-INH 活性が低下)、内臓病変など

一般的に「直接的な要因」は接触後すぐに膨疹が出現し、一過性のことが多いのに対し、「背景として関与する要因」は膨疹が出現するまでに時間がかかり、持続性のことが多いとされています。そしてこれらの要因の多くは単独ではなく組み合わさって蕁麻疹の原因となります。原因をつきとめるために、詳しくお話をうかがい、必要であれば血液検査などを行います。

検査

蕁麻疹の原因をつきとめるために、血液検査を行うことがあります。原因によっては、皮膚を用いた検査(プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)や、疑わしい物質を実際に摂取してみる誘発試験が必要となります。プリックテストは当院で行うことができますが、皮内テストや誘発試験ではアナフィラキシーを起こしてしまうリスクが高くなるため大病院へご紹介させていただきます。

治療

まず原因の除去が一番ですが、原因を除去しても症状が落ち着かなかったり、そもそも原因が分からなかったりすることが多い病気です。その際には適切な薬物療法が必要となります。基本は抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服ですが、いくつか種類がありますので症状により変更・追加し、患者さまに合う薬剤を探すのが大切です。また、かゆみに対してもっとも即効性があるのは冷やすことですので、つらいときには氷まくらや保冷剤などで冷やすのが良いでしょう。

蕁麻疹は通常、発症してから6週間以内で9割の方が軽快しますが、治療しているにも関わらず6週間以上経過している方の場合には、症状はさらに数か月~数年続く可能性があります。しかしそのような慢性蕁麻疹の方でも、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬を3か月ほど連続で内服すれば完治も望めることが報告されています。

また蕁麻疹のタイプによっては胃薬、抗ロイコトリエン薬、漢方薬、トラネキサム酸、レセルピン、ジアフェニルスルホン、免疫抑制薬(シクロスポリン)などが著効する場合もあります。

内服薬は効果があっても中止するのが早すぎると、蕁麻疹がぶり返す確率が高くなります。発疹やかゆみが出なくなっても、一定期間は継続することが大切です。急性蕁麻疹の方は1週間程度、慢性蕁麻疹の方は数か月間かけて減量・中止するのが理想的です。

難治性の方、もしくは症状が強い方にはステロイド剤の内服・点滴を短期間行う場合があります。またアナフィラキシー反応と呼ばれる呼吸苦を伴う急激な反応を引き起こす可能性がある患者さまにはエピペン(アドレナリン自己注射薬)も処方いたします。

2017年3月には抗IgE抗体製剤である「ゾレア」が慢性蕁麻疹にも保険適応となりました。ほかの治療では効果が不十分な方にも有効な薬剤ですが、喘息やアナフィラキシーに対応可能な病院での使用が望ましいとされているため、ご希望の際にはご紹介させていただきます。

日常生活での注意点

蕁麻疹は体が温まると、より出現しやすくなります。治療中の飲酒・運動・入浴などはできるだけ控えめにした方が良いでしょう。摩擦刺激も蕁麻疹の原因となるため、体を擦って洗ったり、下着でしめつけたりしないようにしてください。

<文献>
(1) 蕁麻疹診療ガイドライン2018. 日皮会誌. 2018;128:2503-624.

かゆい病気,皮膚科の病気

Posted by taisuke kamiyama