掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症とは

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は白色~黄色の膿を持った小さな発疹が手のひらや足のうらに生じる病気で、周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します(1)

多くの患者さまは原因をつきとめることができず、対症療法を行うことになりますが、10年ほど経つと自然に治る方がほとんどです。それまでは病院に通院していただくことで、日常生活に支障がないようにすることが理想的です。

症状

まず小さな水ぶくれが生じ、次第に白色~黄色の膿に変化します。その後、赤みも生じ、ガサガサとした状態になります。出始めに、かゆみを伴う方が多いです。また、鎖骨や胸骨(胸の中央)の関節が痛くなることもあります。

原因

原因不明の方が多いものの、病巣感染、金属アレルギー、喫煙などが悪化要因となることが知られています。

  • 病巣感染
    体のどこかに細菌による慢性炎症があると、掌蹠膿疱症を生じることがあります。このような状態は病巣感染(びょうそうかんせん)と呼ばれ、歯周病・扁桃炎・副鼻腔炎などが代表的です。病巣感染は自覚症状がない場合もあり、耳鼻科や歯科の先生の診察で初めて分かることもあります。病巣感染が見つかった場合には、その治療を行うことで、掌蹠膿疱症の完治が望めます。
  • 金属アレルギー
    虫歯などの治療で口の中に金属がある方は、それが原因となり掌蹠膿疱症を発症することがあります。金属アレルギーが疑われる場合には、パッチテスト(金属の試薬を皮膚に貼る検査)を行うのが理想的です。もし陽性であれば、歯科の先生に相談し、歯科金属の交換を検討していただきます。
  • 喫煙
    喫煙は、掌蹠膿疱症の主な原因ではないかもしれませんが、明らかな悪化要因であることが知られています。治療を進めていく上で、基本的には禁煙した方が良いでしょう。

検査

足の発疹は水虫によく似ているため、診断をはっきりさせるために顕微鏡検査を行います。検査を行う時は、まず患部の皮を少し剥いて取ります。取った皮を水酸化カリウム溶液につけて溶かし、顕微鏡で観察します。白癬菌が見つからなければ、水虫を否定することができます。

治療

  • 活性型ビタミンD3外用薬
    副作用が非常に少なく、治療の基本となる外用薬です。日本では、オキサロール(マキサカルシトール)、ドボネックス(カルシポトリオール)、ボンアルファ(タカルシトール)の3種類が用いられています。
    ビタミンD3外用薬は効果が見られるまで1か月ほどかかることもあるため、治療開始当初はステロイド外用薬と重ねて塗っていただくのが効果的です。発疹が改善してきたらビタミンD3外用薬のみでも良い状態を保てることが多く、症状によっては「朝はビタミンD3外用薬、夜はステロイド外用薬」や「平日はビタミンD3外用薬、休日はステロイド外用薬」というように塗っていただくのも一つの方法です。
  • ステロイド外用薬
    ビタミンD3外用薬と比べ、種類が多く、さまざまな強さのものがあります。強いものはビタミンD3外用薬よりも早くよく効きますが、同じ部位に長期間塗り続けると、皮膚が薄くなったり毛細血管が拡張したりする副作用を生じることがあります。当院では炎症の程度に応じて最適なものを処方いたします。
  • 光線療法
    ナローバンドUVBやエキシマライトは、中波長紫外線(UVB)の中の非常に狭い波長の紫外線を照射する機器で、海外ではさまざまな皮膚炎の治療に使われています。掌蹠膿疱症に対する効果は、これまでのUVBに比べて優れており、PUVA療法とほぼ同等です。また、発がん性に関してはPUVA療法よりも少ないとされています。
    やけどを防ぐため、最初の照射時間は短くし、だんだんと長くしていきます。あまり間をあけると照射時間を短くしなければならないため、1~2週間に1回程度の通院が必要になります。10~20回ほど照射すると、多くの方に治療効果が見られます。手のひら、足のうら以外に照射すると日焼けと同じように色素沈着を生じますが、そのほかに大きな副作用はありません。
    当院ではナローバンドUVBエキシマライトをそれぞれご用意しておりますが、掌蹠膿疱症の患者さまには狭い範囲に高出力の照射が可能なエキシマライトがお勧めです。
  • ネオーラル(シクロスポリン)
    ネオーラルは免疫にかかわるTリンパ球(白血球の一種)に作用し、異常な免疫反応をおさえる内服薬です。もともと腎移植や骨髄移植などに使用するために開発されましたが、現在ではさまざまな病気に対し、世界中の多くの国で使われています。掌蹠膿疱症には保険適用がないものの、日本皮膚科学会の診療の手引きにおいても治療薬の一つとして推奨されています(1)
    副作用として高血圧と腎障害が比較的多いものの、早期に発見すればネオーラルを減量もしくは中止することで回復します。内服中は定期的に血圧測定と血液検査を受けていただく必要があります。
  • チガソン(エトレチナート)
    ビタミンAと似た化学構造で、その効き目を強めた内服薬です。皮膚の角化を正常化させる作用があります。
    副作用として口唇炎、皮膚の乾燥・菲薄化、肝障害などが起こることがあり、とくに口唇炎は半数の方に見られます。肝障害をチェックするため、3か月に1回は血液検査をしておくと安心です。また、催奇形性があるため、妊娠中またはその可能性がある女性は絶対禁止です。近い将来に妊娠を希望されている方も原則禁止です。内服中止後も、女性は2年間(男性は6か月間)の避妊が義務づけられています。
  • オテズラ(アプレミラスト)
    オテズラは乾癬の治療薬として開発され保険適応となっている薬剤ですが、掌蹠膿疱症にも有効であることが報告されています(2)。これまでの内服薬と同等以上の有効性を持ち、かつ副作用が非常に少ないのが利点です。
  • 生物学的製剤
    生物学的製剤とは、生体由来の物質あるいは生物の機能を利用して製造された医薬品のことです。掌蹠膿疱症では現在、トレムフィア、スキリージ、ルミセフの3剤が厚生労働省に承認されています。非常に高い効果が期待できますが、値段が高いことと感染症のリスクがあることが欠点です。当院にはご用意がないため、生物学的製剤による治療が望ましい患者さまは大病院へご紹介させていただきます。

日常生活での注意点

掌蹠膿疱症の患者さまは健康な方と比べて、糖尿病や甲状腺疾患を発症する確率が高いことが知られています。喉の渇き・動悸・息切れなどの症状がありましたら、ご相談ください。

<文献>
(1) 掌蹠膿疱症診療の手引き2022. 日皮会誌. 2022;132:2055-2113.
(2) Tadashi T et al: Efficacy and Safety of Apremilast for the Treatment of Japanese Patients with Palmoplantar Pustulosis: Results from a Phase 2, Randomized, Placebo-Controlled Study. Am J Clin Dermatol. 2023;24:837–47.

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Posted by taisuke kamiyama