尋常性白斑
尋常性白斑とは
尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)は、皮膚の色が白く抜けてしまう病気の中でもっとも多く、人口の1%近くに見られます(1)。痛みやかゆみはありませんが、まだら状に色が抜けてしまうため、多くの患者さまが精神的につらい思いをされています。現在では症状に合わせたさまざまな治療法があるため、皮膚科専門医への受診をおすすめしています。
症状
白斑は体のどこにでもでき、痛みや痒みはありません。一般的には、まず親指の先ぐらいの大きさの白斑が2、3個できます。それだけで症状が進まなくなる方は「限局型」です。その後、白斑が大きくなり数が増えていく方は、「汎発型」もしくは「分節型」です。
「汎発型」は体のいろいろな所に徐々に白斑が広がっていき、左右対称となることが多いタイプです。「分節型」は左右どちらかの神経の通り道に沿って急速に白斑が広がっていくタイプで、30歳以下の若い人に比較的多く見られます。
原因
尋常性白斑は現在のところ、自己免疫性疾患の一種ではないかと言われています。本来、細菌やウイルスなどに対する防御に働いている免疫が、なんらかの理由で皮膚のメラニン色素をつくる色素細胞(メラノサイト)を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。
実際、尋常性白斑の方は、ほかの自己免疫性疾患を合併することがあり、とくに甲状腺疾患が多いと言われています。
「分節型」の白斑では、神経から分泌される物質が原因ではないかとも考えられていますが、詳しいことはまだ不明です。
検査
基本的に診察だけで診断がつきます。自己免疫性疾患の合併が疑われる場合には、血液検査などを行います。
治療
さまざまな治療法があるため、ご年齢や白斑の面積に応じて、患者さまとご相談の上で方針を決めさせていただきます。
- 外用薬
外用薬は効果が弱いものの、ほとんど副作用がありません。そのため軽症の方から重症の方まで用いられます。- ステロイド外用薬
ステロイドは炎症をおさえる作用があり、湿疹などに使われることが多い薬ですが、尋常性白斑にも有効と言われています。同じ部位に長期間塗り続けると、皮膚が薄くなったり毛細血管が拡張したりする副作用を生じることがあります。症状が落ち着いたら、外用を中止します。 - プロトピック軟膏
ステロイドと同じように炎症をおさえる作用がある外用薬で、尋常性白斑への効果も証明されています。皮膚が薄くなったり毛細血管が拡張したりする副作用がほとんどないため、長期的に使用することができます。外用し始めの数日間、チクチクとした刺激感を生じることがあるのが欠点です。 - 活性型ビタミンD3外用薬
ステロイドほどではないものの、ビタミンD3外用薬も尋常性白斑に効果があると言われています。副作用をあまり気にすることなく使用できるのが利点です。 - フロジン液
血流を改善する作用がある外用薬です。副作用が非常に少ないものの、効果も弱いため、ほかの治療と併用するのがおすすめです。
- ステロイド外用薬
- 光線療法
尋常性白斑の治療には紫外線が有効であることが古くから知られており、近年ではナローバンドUVBやエキシマライトと呼ばれる非常に狭い波長の紫外線が用いられることが多くなっています。これまでの紫外線照射機と比べ、効果が優れており、発がん性も少ないとされています。
やけどを防ぐため、最初の照射時間は短くし、だんだんと長くしていきます。あまり間をあけると照射時間を短くしなければならないため、1~2週間に1回程度の通院が必要になります。10~20回ほど照射すると治療の効果が出始めます。正常部に照射してしまうと日焼けと同じように色素沈着を生じるため、白斑部のみに照射を行うことが重要です。
当院ではナローバンドUVBとエキシマライトをそれぞれご用意しておりますので、白斑の範囲に応じてご選択いただけます。 - 手術療法
ほかの治療ではあまり効果が見られず、積極的な治療を希望される方には、皮膚移植術など手術療法がおすすめです。当院では施行していないため、近隣の大病院へご紹介させていただきます。
日常生活での注意点
とくに制限はありませんが、やけどやケガなどの刺激やストレスが発症の原因となることがあるとされており、無理をしないことが大切です。
また尋常性白斑の方は健常者に比べると紫外線による発癌が少ないことが知られています(2)が、日焼けをすると正常部と白斑部のコントラストが目立ってしまうため、日光はある程度避けるのがおすすめです。
<文献>
(1) 尋常性白斑診療ガイドライン. 日皮会誌. 2012;122:1725-40.
(2) 佐野栄紀ほか:白斑パラドックス. 日皮会誌. 2021;131:1859-68.