ニキビ
ニキビとは
ニキビは、ホルモンやストレスなどの影響により毛穴で炎症が起こる病気(1)で、医学用語では尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)と呼ばれます。
ニキビの始まりは、面皰(めんぽう)やコメドと呼ばれる毛穴の詰まりです。これらは俗に白ニキビや黒ニキビとも呼ばれ、放っておくと赤いプツプツとしたニキビや、膿をもったニキビを生じます。さらにひどくなると皮膚のふくろや、しこりができることもあります。
治療が遅くなり瘢痕(傷あと)ができてしまうと治療が難しくなるため、治りが悪かったり繰り返したりする場合には、早めに皮膚科へ受診するのがお勧めです。
原因
- 思春期ニキビ
小学校の高学年からでき始め、思春期に症状がピークとなります。成長期に性ホルモンが活発になると、皮脂の分泌が多くなります。毛穴に皮脂が詰まると、皮脂を好むアクネ菌が増殖し、炎症を起こしてしまいます。 - 大人ニキビ
思春期に比べ、角質増殖による毛穴の詰まりが原因となることが多いです。女性に多く見られ、ストレス・睡眠不足・月経・乾燥などが悪化要因になります。間違ったスキンケアにより悪化している場合もあります。
検査
診察だけで診断がつくことがほとんどですので、基本的に検査は必要ありません。まれに、ほかの病気との区別が難しい場合には、皮膚生検を行うことがあります。
治療
外用薬
- 抗菌薬
炎症を起こしている赤いニキビに対しては、アクネ菌をターゲットにした抗菌薬が有効です。軽症の患者さまには外用薬(ゼビアックスローション、ダラシンTゲル、アクアチムクリームなど)を処方いたします。
抗菌薬は長期間続けると耐性菌が出現し、効果が出にくくなってしまいます。長くても3か月ほどにとどめ、症状を繰り返すようであればディフェリンゲルやベピオゲルを試してみた方が良いでしょう。 - ディフェリンゲル(アダパレン)
ディフェリンゲルは皮膚の角化細胞に働き、角層を薄くする作用がある外用薬です。白ニキビ・黒ニキビに有効で、継続して使うとニキビができにくい肌になります。効果が出るまで1~2か月かかるため、赤いニキビがある場合には抗菌薬を併用するのが良いでしょう。症状が落ち着いてからも、新しいニキビを予防するためには1年間ほど外用を続けるのが良い、と言われています。
角層が薄くなるため、塗り始めて1~2週間ほどは少し赤みや乾燥などの副作用が見られることが多いですが、そのまま塗り続けていると1か月ほどで落ち着きます。洗顔後に直接ディフェリンゲルを塗らず、化粧水や乳液を塗ってからディフェリンゲルを塗るようにすると副作用が少なくなります。反応には個人差があるため、赤みや乾燥が強く起きた場合には一時中断したり塗る回数を減らしたりしていただくことがあります - ベピオゲル・ベピオローション(過酸化ベンゾイル)
ベピオゲルは2015年4月に発売された、アクネ菌への抗菌作用と角層が剥がれやすくなる作用を持つ外用薬です。耐性菌を生じないため長期間使用しても効果が落ちないことが利点で、赤いニキビだけでなく白ニキビ・黒ニキビにも有効です。
赤みや乾燥などの副作用を生じることがありますが、2023年5月に発売されたベピオローションは保湿効果を高めてあり副作用が軽減されています。乾燥による症状が強い場合には、一時中断したり塗る回数を減らしたりしていただく必要があります。ベピオゲルの主成分である過酸化ベンゾイルには漂白作用があり、髪や衣服に付いてしまうと色落ちしてしまうことがあるため注意が必要です。 - デュアック配合ゲル(過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン)
2015年7月に発売された、過酸化ベンゾイルにクリンダマイシンという抗菌薬を配合した外用薬(2)です。抗菌薬がプラスされているため、ベピオゲルよりも赤いニキビへの効果が高い可能性がありますが、長期間続けると耐性菌が出現するリスクもあります。使用は3か月ほどにとどめ、その後はベピオゲルに変更し維持療法として続けていただくのがおすすめです。 - エピデュオゲル(アダパレン+過酸化ベンゾイル)
2016年11月に発売された、アダパレンに過酸化ベンゾイルを配合した外用薬です。角層を薄くするアダパレンと、角層が剥がれやすくなる過酸化ベンゾイルが同時に作用するため白ニキビ・黒ニキビにとても効果が高く、赤ニキビにも有効です。
しかしその一方で、赤みや乾燥などの副作用がアダパレン単独や過酸化ベンゾイル単独に比べると強く出る可能性があります。アダパレンもしくは過酸化ベンゾイルのみでは副作用が見られず、さらに高い効果を求める方におすすめです。 - イオウ・カンフルローション
伝統的にニキビ治療に使われている外用薬です。アクネ菌を殺菌する作用と、角質を軟らかくしてニキビの芯や膿の排出を促す作用、皮膚を乾燥させる作用があります。皮脂が多い方に有効ですが、乾燥しすぎる場合があるため注意が必要です。
内服薬
- 抗菌薬
炎症が強い患者さまには内服薬(ビブラマイシン、ルリッド、ファロムなど)も処方いたします。
抗菌薬は長期間続けると耐性菌が出現し、効果が出にくくなってしまいます。長くても3か月ほどにとどめ、その後は維持療法としてディフェリンゲルやベピオゲルの外用を続けることが大切です。 - 漢方薬
ほかの治療では効果が不十分な患者さまには、漢方薬が有効な場合があります。荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)などを処方いたします。 - ホルモン治療
保険のニキビ治療では治らない女性の方には、ホルモンに作用する低用量ピルやスピロノラクトンが奏効する場合があります。自費治療になりますが、生理周期でニキビが悪化する方や、顎やフェイスラインにニキビができやすい方には選択肢の一つとなります。
その他
- ケミカルピーリング
ピーリングは余分な角質や皮脂を取り除き、皮膚の生まれ変わりを促す治療法です。皮膚科で行われるケミカルピーリングは、月1回の施術でディフェリンゲルやベピオゲルを毎日塗布するのと同等の効果が期待できます。ピーリング後は一時的に皮膚のバリア機能が低下し乾燥しやすくなるため、スキンケアや紫外線対策をしっかり行うことが大切です。 - 面皰圧出
針もしくはレーザーで穴をあけ、中にたまった膿や皮脂を押し出す治療法です。ほかの治療と併用することで、膿がたまっているニキビでも炎症を早く落ち着かせることができます。 - ステロイド局所注射
ほかの治療では効果が見られない、強い炎症が起きているニキビや、しこりになってしまったニキビには、ステロイド剤の局所注射が有効です。
日常生活での注意点
- 洗顔
洗顔の目的は、余分な皮脂と汚れ、毛穴をふさぐ角質を除去し、皮膚の清潔を保つことです。洗顔は重要ですが、擦りすぎるとニキビが悪化する原因になります。よく泡立てて優しく洗うのが理想的で、回数は1日2回が良いとされています。 - 化粧
ニキビがあっても、メイク禁止というわけではありませんが、注意が必要です。化粧品はニキビ肌用のノンコメドジェニック製品や、油性成分を含まないもの(オイルフリー)または少ないものを使いましょう。油性成分が多量に含まれていると毛穴をふさいでしまうため、ニキビが悪化する原因になります。コンシーラーや、カバー力の高いクリームタイプ・リキッドタイプのファンデーションを使うことは避け、パウダータイプのものを使うのがおすすめです。また、ニキビ痕に対する化粧品としてイエロー系のものを使用すると、色素沈着が目立たなくなります。アイメイクやリップメイクなどのポイントメイクによって、視線を目元や口元に集めるのも有効で、ニキビを目立たなくすることができます。 - 食事
食事のニキビへの影響は古くから論議されていますが、今のところ統一された見解はありません(3)。極端にかたよった食事を避け、バランスよく食べることが大切です。ビタミンB2・B6は皮脂の分泌をおさえる作用があるため、多めにとると良いでしょう。
<文献>
(1) 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日皮会誌. 2023;133:407-50.
(2) Kawashima M et al: Clindamycin phosphate 1.2%-benzoyl peroxide 3.0% fixed-dose combination gel has an effective and acceptable safety and tolerability profile for the treatment of acne vulgaris in Japanese patients: a phase III, multicentre, randomized, single-blinded, active-controlled, parallel group study. Br J Dermatol. 2015;172:494-503.
(3) Laetitia P et al: Association Between Adult Acne and Dietary Behaviors: Findings From the NutriNet-Santé Prospective Cohort Study. JAMA Dermatol. 2020;156:854-62.