円形脱毛症

円形脱毛症とは

円形脱毛症(えんけいだつもうしょう)は脱毛症の中でもっとも多い病気です。脱毛した面積が広いほど、また脱毛してからの経過が長いほど治りづらくなります。症状や年齢に応じた適切な治療が必要です。

症状

頭の毛が円形に抜け、症状が進行するとまだら状に抜けます。重症になると頭全体の毛が抜け、さらにまゆ毛・まつ毛・ひげなど全身の毛が抜けることもあります。一般的に自覚症状はありませんが、脱毛前に軽い痒みや違和感を生じる場合があります。瘢痕(傷あと)にはなりません。

爪にも変化が見られることがあり、もっとも多いのは爪の小さなへこみです。

原因

以前は主な原因として精神的ストレスが挙げられていましたが、近年では円形脱毛症と精神的ストレスの関連性は乏しいとされています。

円形脱毛症は自己免疫性疾患の一種であり、もともと細菌やウイルスなどに対する防御に働いている免疫が、なんらかの理由で毛包(毛の根本)を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。

実際、円形脱毛症の方は甲状腺疾患・尋常性白斑・SLE・関節リウマチなど、ほかの自己免疫性疾患も合併することが知られており、とくに甲状腺疾患は8%の合併率と報告(1)されています。

また、アレルギー疾患の合併も非常に多く見られ、約半数の方がアトピー性皮膚炎・喘息・アレルギー性鼻炎などを合併していると言われています。

検査

診察だけで診断がつくことがほとんどですが、拡大鏡(ダーモスコピー)を使うと、より確実です。自己免疫性疾患やアレルギー疾患の合併が疑われる場合には、血液検査などを行います。

治療

さまざまな治療法があるため、ご年齢や脱毛面積に応じて、患者さまとご相談の上で方針を決めさせていただきます。

  • 外用薬
    外用薬は効果が弱いものの、ほとんど副作用がありません。そのため軽症の方から重症の方まで用いられます。重症の方はほかの治療法と併用するのが一般的です。

    • フロジン液
      頭皮の血流を改善する作用がある外用薬です。1日2~3回、脱毛部に外用してください。副作用が非常に少ないため、治った後もしばらく外用して構いません。
    • ステロイド外用薬
      ステロイドは炎症をおさえる作用があり、湿疹などに使われることが多い薬です。円形脱毛症の方の頭皮では、毛包(毛の根本)の周囲に炎症細胞が集まっていることが分かっているため、ステロイドが有効と言われています。同じ部位に長期間塗り続けると、皮膚が薄くなったり毛細血管が拡張したりする副作用が起こることがあります。症状が落ち着いたら、外用を中止します。
      なお、2017年に改訂された日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2)では推奨度がC1からBに上げられ、SADBE療法、ステロイド局所注射と並んで推奨されています。
  • 内服薬
    • 漢方薬
      円形脱毛症の治療では、「セファランチン」と「グリチロン」の2剤が使われます。現段階では効果が十分には実証されていませんが、副作用がほとんどないため、処方されることが多い薬剤です。
    • 抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬
      アトピー性皮膚炎などをお持ちの患者さまには、ほかの治療と併用することで効果が見られます。
    • ステロイド内服薬、ステロイドパルス療法
      ステロイド内服薬には発毛を促進する作用があることが明らかになっていますが、肥満・糖尿病・胃潰瘍・骨粗しょう症・ニキビなど、さまざまな副作用が起こることがあります。そのため、脱毛が広範囲、かつ急速に進行している患者さまに限定して行われる治療法です。とくにパルス療法では大量のステロイドを点滴するため、短期間の入院が必要になります。
  • SADBE療法
    SADBEと呼ばれる化学物質を頭皮に塗ることで人工的にかぶれを起こす治療法です(3)。効果が高く副作用が少ないため、日本皮膚科学会でも推奨(2)されています。>>くわしくはこちら
  • 液体窒素による冷却療法
    マイナス196℃の液体窒素を用いて、脱毛部に刺激を加えることで、発毛を促します。軽いピリピリ感と赤みを一時的に生じますが、大きな副作用はありません。SADBE療法ほどの強い効果はありませんが、副作用がほとんどないため、ほかの治療と組み合わせて行われることが多い治療法です。
  • 光線療法
    紫外線照射装置による光線療法はさまざまな皮膚疾患に有効ですが、最近は円形脱毛症にも効果があることが報告されています。1~2週間に1回の通院が必要ですが、ほとんど副作用がないのが利点です。
  • ステロイド局所注射
    脱毛部にステロイドを直接注射する治療法です。日本皮膚科学会でも有効性が高く評価(2)されていますが、痛みが強いのが難点です。また、繰り返し注射を行うと副作用として、皮膚が薄くなってしまうことがあります。ほかの治療法では効果が見られなかった患者さまにおすすめの治療と言えます。

日常生活での注意点

日常生活においてとくに制限などはありませんが、疲れやストレスが悪化要因となることがあるため、規則正しい生活やバランスの良い食事は大切です。

<文献>
(1) Muller SA, Winkelmann RK: Alopecia Areata: An Evaluation of 736 Patients. Arch Dermatol. 1963;88:290-7.
(2) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日皮会誌. 2017;127:2741-62.
(3) Happle R et al: Contact allergy as therapeutic tool for alopecia areata: Application of squaric acid dibutylester. Dermatologica. 1980;161:289–97.