ウイルス性イボ
ウイルス性イボとは
ウイルス性イボは、ウイルスが皮膚に感染して生じる良性腫瘍の一種で、お子様からご年配の方まで、よく見られる病気の一つです。ときに自然治癒することもありますが、だんだんと大きくなったり数が増えたりすることが多いため、早めに治療することをおすすめしています。
症状
もっとも一般的なタイプの尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)では、丸く盛り上がり、表面がイボ状に硬くなった腫瘍が1~数個できます。体のどこにでもできますが、手足と顔が比較的多く見られます。直径は1cm以下のことがほとんどですが、放っておくと大きくなることもあります。
原因
ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus、HPV)が皮膚や粘膜に感染することが原因です(1)。ウイルスの型によって、尋常性疣贅、扁平疣贅、尖圭コンジローマなどに分類され、部位や症状にそれぞれ特徴があります。
検査
診察だけで診断がつくことがほとんどですので、基本的に検査は必要ありません。まれに、ほかの腫瘍との区別が難しい場合には、皮膚生検を行うことがあります。
治療
- 液体窒素による凍結療法
イボに対するもっとも一般的な治療法で、日本皮膚科学会でも推奨(1)されています。
マイナス196℃の液体窒素を、綿棒もしくはスプレーを使ってイボに当て、5~30秒ほど凍結させます。治療した当日から入浴は可能で、ばんそうこうなども必要ありません。2~3週間に1回のペースで続けることで、イボがだんだんと小さくなっていきます。3か月続けても効果が見られないときは、ほかの治療へ変更したり、併用したりするのが良いでしょう。
効果が高く、副作用が少ない治療ですが、痛みを伴うことが難点です。凍結させた直後はかなり痛むのが普通で、軽い痛みは1~2日ほど続くことがあります。また、あまり強く凍結させると水ぶくれや血豆ができることもあります。ただし、水ぶくれや血豆ができるぐらいしっかり凍結させた方が、イボの治りは良いとも言えます。
足のうらと爪のまわり以外のイボであれば、数回の凍結療法で治ることがほとんどです。足のうらと爪のまわりのイボは治りにくいことがあるため、ほかの治療を併用するのがおすすめです。 - モノクロロ酢酸
モノクロロ酢酸は強い酸で、ウイルスに感染した細胞を直接的に破壊する作用があります。2週間に1回のペースでイボに塗ることで、凍結療法に近い効果が得られ、痛みも軽くて済むのがポイントです(2)。塗った後、数時間は濡らさないようにする必要があります。>>くわしくはこちら - ブレオマイシン局所注射
ブレオマイシンは抗腫瘍性抗生物質の一種で、イボに直接注射することで効果を発揮します。月に1回のペースで2〜3回を目安に行います。痛みを伴うものの効果が高いため、ほかの治療法で効果が見られなかった方におすすめです。>>くわしくはこちら - SADBE療法
かぶれを起こすSADBEという物質を塗り、炎症を起こして免疫力を高める治療法です。ある程度の痒みや赤みを生じるのが欠点ですが、痛みがないのがメリットです。1~2週間に1回ほどの通院が必要ですが、お子様でも受けていただくことができます。>>くわしくはこちら - サリチル酸外用薬
サリチル酸は外用することで、皮膚の角層を剥がすとともに、イボに対する免疫力を高める作用があるとされています(3)。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨(1)されおり、液体窒素による凍結療法などと組み合わせるのが効果的です。貼るタイプと塗るタイプがあり、患者さまのご年齢やイボの部位によって使い分けます。 - 活性型ビタミンD3外用薬
ビタミンD3は、皮膚の細胞増殖を抑え、皮膚が厚くなるのを防ぐ効果があります。塗った後に、ラップやばんそうこうで密封すると効果が高くなります。 - ベセルナクリーム
尖圭コンジローマの治療薬で、塗った部分の免疫力を高める作用があります。皮膚が薄い部位のイボに対して効果を発揮します。 - イボ剥ぎ手術、炭酸ガスレーザーによる切除
ほかの方法で効果が見られなかった患者さまにおすすめの治療法です。凍結療法に比べ、治癒率が高いものの、5~10%ほどに再発が見られます。治療後は一時的に深い傷になるため、3~4週間ほど外用処置が必要になります。 - ヨクイニン
ヨクイニンは、イネ科の植物であるハトムギの種子に含まれる成分を抽出した内服薬です。大きな副作用がなく、とくにお子様に効果が高いことが報告されています。効果が出るまで時間がかかることが多いため、まずは3か月ほど内服するのが一つの目安です。 - シメチジン(タガメット)
シメチジンは胃薬の一種ですが、免疫調整作用があり、イボへの有効性が報告されています。
日常生活での注意点
イボを気にして触っていると、指などにうつる場合があるため、注意が必要です。また、治癒後もウイルスが目に見えない状態で残っていると、平均3か月ほどで再発すると言われています。再発したときには、早めに受診することも大切です。
<文献>
(1) 尋常性疣贅診療ガイドライン2019. 日皮会誌. 2019;129:1265-292.
(2) Bruggink SC et al: Monochloroacetic acid application is an effective alternative to cryotherapy for common and plantar warts in primary care: a randomized controlled trial. J Invest Dermatol. 2015;135:1261-7.
(3) Sterling JC et al: British Association of Dermatologists’ guidelines for the management of cutaneous warts 2014. Br J Dermatol. 2014;171:696-712.